ドストエフスキー全作品を電子化する

フョードル・ドストエフスキー(1821-1881)の全作品の電子化をめざしている人のブログです

はじめまして

このブログでは、ドストエフスキー(1821-1881)の全作品の電子化を目標としています。2年間で10MBの電子テキストの公開を予定しています。 ここで公開している電子テキストの8割は、生活苦の学生への支援事業の成果物です。資金は2年間で約100万円です。こ…

ドストエフスキー各作品へのリンク

文字が小さいと感じたら、「CTRL」と「+」のキーを同時に押して、文字の大きさを調節してください。 https://www.google.com/search?q=%E6%96%87%E5%AD%97+%E5%A4%A7%E3%81%8D%E3%81%8F%E3%81%99%E3%82%8B&oq=%E6%96%87%E5%AD%97%E3%80%80%E5%A4%A7&aqs=chr…

『カラマーゾフの兄弟』第十一篇第十章 『それはあいつが言ったんだ!』

第十 『それはあいつが言ったんだ!』 アリョーシャは入って来るといきなり、一時間ほど前に、マリヤが自分の住まいへ駈け込んで、スメルジャコフの自殺を告げたと、イヴァンに話した。『わたしがね、サモワールをかたづけにあの人の部屋へ入ると、あの人は…

『カラマーゾフの兄弟』第十一篇第九章 悪魔 イヴァンの悪夢

第九 悪魔 イヴァンの悪夢 筆者《わたし》は医者ではないが、しかしイヴァンの病気がどういう性質のものか、読者にぜひ少し説明しなければならぬ時期が来たような気がする。少し先廻りをして、一ことだけ言っておこう。彼はきょう今晩、譫妄狂にかかる一歩手…

『カラマーゾフの兄弟』第十一篇第八章 三度目の、最後の面談

第八 三度目の、最後の面談 まだ半分道も行かないうちに、その日の早朝と同じような、鋭いからっ風が起って、細かいさらさらした粉雪がさかんに降りだした。雪は地面に落ちたが、落ちつくひまもなく風に巻き上げられた。こうして、間もなく本当の吹雪になっ…

『カラマーゾフの兄弟』第十一篇第七章 二度目の訪問

第七 二度目の訪問 スメルジャコフはその時分、病院を出ていた。イヴァンは彼の新しい住まいを知っていた。それは、例の歪みかしいだ丸太づくりの小さい百姓家みたいな家で、廊下を真ん中にして二つに仕切られていた。一方には、マリヤ・コンドラーチエヴナ…

『カラマーゾフの兄弟』第十一篇第六章 スメルジャコフとの最初の面談

第六 スメルジャコフとの最初の面談 イヴァンがモスクワから帰って以来、スメルジャコフのところへ話しに行くのは、これでもう三度目であった。あの兇行後、初めてスメルジャコフに会って話をしたのは、彼がモスクワから帰って来た当日て[#「当日て」はマ…

『カラマーゾフの兄弟』第十一篇第五章 あなたじゃない

第五 あなたじゃない アリョーシャはイヴァンの家へ行く途中、カチェリーナが借りている家のそばを通らなければならなかった。どの窓にも、灯火《あかり》がさしていた。彼はふと立ちどまって、訪ねてみようと決心した。一週間以上も、カチェリーナに会わな…

『カラマーゾフの兄弟』第十一篇第四章 頌歌と秘密

第四 頌歌と秘密 アリョーシャが監獄の門のベルを鳴らした時は、もうだいぶ遅く(それに、十一月の日は短いから)、たそがれに近かった。けれど、アリョーシャは何の故障もなく、ミーチャのところへ通されることを知っていた。こういうことはすべてこの町で…

『カラマーゾフの兄弟』第十一篇第三章 悪魔の子

第三 悪魔の子 アリョーシャがリーザの部屋へはいると、彼女は例の安楽椅子になかば身を横たえていた。それは、彼女がまだ歩けない時分に、押してもらっていたものである。彼女は出迎えに身を動かそうともしなかったが、ぎらぎら輝く鋭い目は、食い入るよう…

『カラマーゾフの兄弟』第十一篇第二章 病める足

第二 病める足 用件の第一は、ホフラコーヴァ夫人の家へ行くことだった。アリョーシャは、少しでも手早くそこの用件を片づけて、遅れぬようにミーチャを訪ねようと思い、道を急いだ。ホフラコーヴァ夫人はもう三週間から病気していた。一方の足が腫れたので…

『カラマーゾフの兄弟』第十一篇第一章 グルーシェンカの家で

第十一篇 兄イヴァン 第一 グルーシェンカの家で アリョーシャは中央広場のほうへ赴いた。彼は、商人の妻モローソヴァの家に住んでいるグルーシェンカのもとへと志したのである。彼女は朝早く、彼のところヘフェーニャをよこして、ぜひ来てもらいたいとくれ…

『おかしな人間の夢』

おかしな人間の夢 ――空想的な物語―― 1 おれはおかしな人間だ。やつらはおれをいま気ちがいだといっている。もしおれが依然として旧のごとく、やつらにとっておかしな人間でなくなったとすれば、これは、位があがったというものだ。だが、もうおれは今さら怒…

『おとなしい女』第二章(完)

※このテキストの校正に協力してくださった、「いとうおちゃ」さんに感謝します。 第 2 章 1 傲慢の夢 ルケリヤはたった今、このままわたしのところに住みつこうと思わない、奥さんの葬式がすんだら、早速お暇をいただくと言明した。わたしは五分ばかり跪い…

『おとなしい女』第一章

※このテキストの校正に協力してくださった、「いとうおちゃ」さんに感謝します。おとなしい女 ――空想的な物語―― 著者より わたしはまずもって読者諸君に、今度、いつもの形式をとった『日記』の代わりに、一編の小説のみを供することについて、お許しを願わ…

『カラマーゾフの兄弟』第十篇第七章 イリューシャ

第七 イリューシャ 医師はまた毛皮の外套にくるまり、帽子をかぶって出て来た。彼は腹だたしそうな気むずかしい顔つきをしていた。それは何か汚いものに触れるのを恐れているようであった。彼はちらりと玄関のほうへ視線を投げ、その拍子にいかつい目つきで…

『カラマーゾフの兄弟』第十篇第六章 早熟

第六 早熟「あなたは、医者がイリューシャのことを、どう言うと思います?」とコーリャは口早に言った。「それにしても、なんていやな面でしょう、僕は医者ってものが癪にさわってたまりませんよ!」 「イリューシャはもう駄目でしょう。私にはどうもそう思…

『カラマーゾフの兄弟』第十篇第五章 イリューシャの寝床のそばで

第五 イリューシャの寝床のそばで もはやわれらにとって馴染みの深いその部屋には、同じく馴染みの深い休職二等大尉スネギリョフの家族が住まっていたが、このとき狭い部屋の中は大勢の人で一ぱいになって、息苦しいほどであった。幾たりかの子供たちも、イ…

『カラマーゾフの兄弟』第十篇第四章 ジューチカ

第四 ジューチカ コーリャはもったいらしい顔つきをして塀にもたれ、アリョーシャが来るのを待っていた。実際のところ、彼はもうずっと以前から、アリョーシャに会いたかったのである。彼は子供だちから、アリョーシャのことをいろいろ聞いていたが、今まで…

『カラマーゾフの兄弟』第十篇第三章 生徒たち

第三 生徒たち けれど、コーリャにはもうこの言葉は聞えなかった。彼はやっと出かけることができた。門の外へ出ると彼はあたりを見まわし、肩をすぼめ、『ひどい寒さだ!』とひとりごちて、通りをまっすぐに歩いて行ったが、とある横町を右へ折れて、市《い…

『カラマーゾフの兄弟』第十篇第二章 幼きもの

第二 幼きもの ちょうど、この寒さの激しい、北風の吹きすさぶ十一月の朝、コーリャはじっと家に坐っていた。日曜日で学校は休みであった。しかし、もう十一時も打ったので、彼はぜひとも『ある非常に重大な用事のために』外へ出かけなければならなかった。…

『カラマーゾフの兄弟』第十篇第一章 コーリャ・クラソートキン

第十篇 少年の群 第一 コーリャ・クラソートキン 十一月の初旬であった。この町を零下十一度の寒さがおそって、それと同時に薄氷が張り初めた。夜になると、凍てついた地面に、ばさばさした雪が少しばかり降った。すると『身を切るようなから風』がその雪を…

メモ 『ドラえもん論』(2020年3月26日、杉田俊介、Pヴァイン)についてのコメント(追記あり)

以下、短い文を並べることにする。・わたしは、『ドラえもん』と藤子不二雄コンビが、過去のものとされていることをおそれる。杉田氏たちがそれを認めるかどうかはともかく。これはわたしのいま現在の不安である。・わたしは、藤子不二雄コンビが過去の人間…

『カラマーゾフの兄弟』第九篇第九章 ミーチャの護送

第九 ミーチャの護送 予審調書が署名されると、ニコライは巌かに被告のほうを向いて、次の意味の『判決文』を読んで聞かせた。何年何月何日某地方裁判所判事は某を(すなわちミーチャを)しかじかの事件に関する被告として(罪状は残らず詳細に書き上げてあ…

『カラマーゾフの兄弟』第九篇第八章 証人の陳述『餓鬼』

第八 証人の陳述『餓鬼』 証人の審問が始まった。けれど、筆者はもう今までのように、詳しく話しつづけることをやめよう。それゆえ、呼び出された証人が一人一人、ニコライの口から、お前たちはまっすぐに正直に申し立てなければならぬ、あとで宣誓をしたう…

『カラマーゾフの兄弟』第九篇第七章 ミーチャの大秘密――一笑に付さる

第七 ミーチャの大秘密――一笑に付さる「みなさん。」彼はやはり以前と同じ興奮のていで言い始めた。「あの金は……私はすっかり白状しましょう……あの金は私のものでした。」 検事と予審判事の顔は長く延びた。彼らもこういうことはまったく予期しなかったので…

『カラマーゾフの兄弟』第九篇第六章 袋の鼠

第六 袋の鼠 ミーチャにとってはまったく予想外な、驚くべきことがはじまった。以前、いな、つい一分間まえまでも、彼は誰にもせよ自分に対して、ミーチャ・カラマーゾフに対して、こんな振舞いをなし得ようとは、夢にも想像できないことであった! それは何…

『カラマーゾフの兄弟』第九篇第五章 受難―三

第五 受難―三 ミーチャは気むずかしげに話し始めたが、しかし、自分の伝えようとしている事件を、ただの一カ所でも忘れたり言い落したりすまいと、前より一そう骨折っているらしかった。彼は塀を乗り越えて父の家の庭園へ入り込んだことや、窓のそばまで近よ…

『カラマーゾフの兄弟』第九篇第四章 受難―二

第四 受難―二「ドミートリイ・フョードロヴィッチ、あなたご自分ではおわかりになりますまいが、あなたがそうして、気さくに返事して下さるので、私たちも本当に元気が出て来るというものですよ……」とニコライは活気づいて言い始めた。たったいま眼鏡をはず…

『カラマーゾフの兄弟』第九篇第三章 受難―一

第三 霊魂の彷徨 受難―一 で、ミーチャは腰かけたまま、野獣のような目つきで、一座の人たちを眺めていた。彼は、人が何を言っているのやら少しもわからなかった。と、ふいに立ちあがって、両手をさし上げながら、大声に叫んだ。 「罪はありません! この血…