『カラマーゾフの兄弟』第10篇

『カラマーゾフの兄弟』第8篇―第11篇(校正ずみ)   (『ドストエーフスキイ全集』第13巻(1959年、米川正夫による翻訳、河出書房新社)))

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『カラマーゾフの兄弟』第十篇第七章 イリューシャ

[#3字下げ]第七 イリューシャ[#「第七 イリューシャ」は中見出し] 医師はまた毛皮の外套にくるまり、帽子をかぶって出て来た。彼は腹だたしそうな気むずかしい顔つきをしていた。それは何か汚いものに触れるのを恐れているようであった。彼はちらりと…

『カラマーゾフの兄弟』第十篇第六章 早熟

[#3字下げ]第六 早熟[#「第六 早熟」は中見出し]「あなたは、医者がイリューシャのことを、どう言うと思います?」とコーリャは口早に言った。「それにしても、なんていやな面でしょう、僕は医者ってものが癪にさわってたまりませんよ!」 「イリュー…

『カラマーゾフの兄弟』第十篇第五章 イリューシャの寝床のそばで

[#3字下げ]第五 イリューシャの寝床のそばで[#「第五 イリューシャの寝床のそばで」は中見出し] もはやわれらにとって馴染みの深いその部屋には、同じく馴染みの深い休職二等大尉スネギリョフの家族が住まっていたが、このとき狭い部屋の中は大勢の人…

『カラマーゾフの兄弟』第十篇第四章 ジューチカ

[#3字下げ]第四 ジューチカ[#「第四 ジューチカ」は中見出し] コーリャはもったいらしい顔つきをして塀にもたれ、アリョーシャが来るのを待っていた。実際のところ、彼はもうずっと以前から、アリョーシャに会いたかったのである。彼は子供だちから、…

『カラマーゾフの兄弟』第十篇第三章 生徒たち

[#3字下げ]第三 生徒たち[#「第三 生徒たち」は中見出し] けれど、コーリャにはもうこの言葉は聞えなかった。彼はやっと出かけることができた。門の外へ出ると彼はあたりを見まわし、肩をすぼめ、『ひどい寒さだ!』とひとりごちて、通りをまっすぐに…

『カラマーゾフの兄弟』第十篇第二章 幼きもの

[#3字下げ]第二 幼きもの[#「第二 幼きもの」は中見出し] ちょうど、この寒さの激しい、北風の吹きすさぶ十一月の朝、コーリャはじっと家に坐っていた。日曜日で学校は休みであった。しかし、もう十一時も打ったので、彼はぜひとも『ある非常に重大な…

『カラマーゾフの兄弟』第十篇第一章 コーリャ・クラソートキン

[#1字下げ]第十篇 少年の群[#「第十篇 少年の群」は大見出し] [#3字下げ]第一 コーリャ・クラソートキン[#「第一 コーリャ・クラソートキン」は中見出し] 十一月の初旬であった。この町を零下十一度の寒さがおそって、それと同時に薄氷が張り…