ドストエフスキー全作品を電子化する

フョードル・ドストエフスキー(1821-1881)の全作品の電子化をめざしている人のブログです

『カラマーゾフの兄弟』第8篇

『カラマーゾフの兄弟』第八篇第八章 夢幻境

第八 夢幻境 やがてほとんど乱痴気騒ぎとでもいうようなものがはじまった。それは世界じゅうひっくり返るような大酒もりであった。グルーシェンカは第一番に、酒を飲ましてくれと叫びだした。 「わたし飲みたいのよ、この前の時と同じように、へべれけになる…

『カラマーゾフの兄弟』第八篇第七章 争う余地なきもとの恋人

第七 争う余地なきもとの恋人 ミーチャは例の大股で、急ぎ足にぴったりとテーブルのそばへ近づいた。 「みなさん」と彼は大きな声でほとんど叫ぶように、とはいえ、一こと一こと吃りながら口をきった。「僕は……僕は……何でもありません! 怖がらないで下さい…

『カラマーゾフの兄弟』第八篇第六章 おれが来たんだ

第六 おれが来たんだ ドミートリイは街道を飛ばして行った。モークロエまでは二十露里と少しあったが、アンドレイのトロイカは、一時間と十五分くらいで間に合いそうな勢いで疾駆するのであった。飛ぶようなトロイカの進行は、急にミーチャの頭をすがすがし…

『カラマーゾフの兄弟』第八篇第五章 咄嗟の決心

第五 咄嗟の決心 フェーニャは祖母と一緒に台所におった。二人とも寝支度をしているところであった。彼らはナザールを頼みにして、今度も内から戸締りをしないでいた。ミーチャは駆け込むやいなや、フェーニャに跳りかかって、しっかりとその喉を抑えた。 「…

『カラマーゾフの兄弟』第八篇第四章 闇の中

第四 闇の中 彼はどこへ駆け出したのか? それは知れきったことである。『おやじの家でなくって、ほかにあれのいるところがない。サムソノフの家からまっすぐに親父のところへ走ったのだ。今となっては、もう疑う余地がない。あいつらの企らみも偽りも、すっ…

『カラマーゾフの兄弟』第八篇第三章 金鉱

第三 金鉱 それは、グルーシェンカがラキーチンに向って、さもさも恐ろしそうに話して聞かせたミーチャの来訪である。そのころ彼女は、例の『知らせ』を待っていたので、昨日も今日もミーチャが姿を見せないのを悦んで、どうか神様のお計らいで自分の出発ま…

『カラマーゾフの兄弟』第八篇第二章 レガーヴィ

第二 レガーヴィ こういうわけで、すぐさま『飛び出し』て行かなければならぬが、馬車賃が一コペイカもなかった。いや、実際は十コペイカ銀貨が二つあったが、これが幾年かの贅沢な生活の名残りなのである。しかし、彼の家にはとっくに動かなくなった、古い…

『カラマーゾフの兄弟』第八篇第一章 商人サムソノフ

第八篇 ミーチャ第一 商人サムソノフ グルーシェンカが新生活を目ざして飛んで行く時、自分の最後の挨拶を伝えるように『命令し』、かつ自分の愛の一ときを生涯記憶するように言いつけた当の相手のドミートリイ・フョードロヴィッチは、そのとき恋人の身の上…