『カラマーゾフの兄弟』第8篇

『カラマーゾフの兄弟』第8篇―第11篇(校正ずみ)   (『ドストエーフスキイ全集』第13巻(1959年、米川正夫による翻訳、河出書房新社)))

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『カラマーゾフの兄弟』第八篇第八章 夢幻境

[#3字下げ]第八 夢幻境[#「第八 夢幻境」は中見出し] やがてほとんど乱痴気騒ぎとでもいうようなものがはじまった。それは世界じゅうひっくり返るような大酒もりであった。グルーシェンカは第一番に、酒を飲ましてくれと叫びだした。 「わたし飲みた…

『カラマーゾフの兄弟』第八篇第七章 争う余地なきもとの恋人

[#3字下げ]第七 争う余地なきもとの恋人[#「第七 争う余地なきもとの恋人」は中見出し] ミーチャは例の大股で、急ぎ足にぴったりとテーブルのそばへ近づいた。 「みなさん」と彼は大きな声でほとんど叫ぶように、とはいえ、一こと一こと吃りながら口…

『カラマーゾフの兄弟』第八篇第六章 おれが来たんだ

[#3字下げ]第六 おれが来たんだ[#「第六 おれが来たんだ」は中見出し] ドミートリイは街道を飛ばして行った。モークロエまでは二十露里と少しあったが、アンドレイのトロイカは、一時間と十五分くらいで間に合いそうな勢いで疾駆するのであった。飛ぶ…

『カラマーゾフの兄弟』第八篇第五章 咄嗟の決心

[#3字下げ]第五 咄嗟の決心[#「第五 咄嗟の決心」は中見出し] フェーニャは祖母と一緒に台所におった。二人とも寝支度をしているところであった。彼らはナザールを頼みにして、今度も内から戸締りをしないでいた。ミーチャは駆け込むやいなや、フェー…

『カラマーゾフの兄弟』第八篇第四章 闇の中

[#3字下げ]第四 闇の中[#「第四 闇の中」は中見出し] 彼はどこへ駆け出したのか? それは知れきったことである。『おやじの家でなくって、ほかにあれのいるところがない。サムソノフの家からまっすぐに親父のところへ走ったのだ。今となっては、もう…

『カラマーゾフの兄弟』第八篇第三章 金鉱

[#3字下げ]第三 金鉱[#「第三 金鉱」は中見出し] それは、グルーシェンカがラキーチンに向って、さもさも恐ろしそうに話して聞かせたミーチャの来訪である。そのころ彼女は、例の『知らせ』を待っていたので、昨日も今日もミーチャが姿を見せないのを…

『カラマーゾフの兄弟』第八篇第二章 レガーヴィ

[#3字下げ]第二 レガーヴィ[#「第二 レガーヴィ」は中見出し] こういうわけで、すぐさま『飛び出し』て行かなければならぬが、馬車賃が一コペイカもなかった。いや、実際は十コペイカ銀貨が二つあったが、これが幾年かの贅沢な生活の名残りなのである…

『カラマーゾフの兄弟』第八篇第一章 商人サムソノフ

[#1字下げ]第八篇 ミーチャ[#「第八篇 ミーチャ」は大見出し] [#3字下げ]第一 商人サムソノフ[#「第一 商人サムソノフ」は中見出し] グルーシェンカが新生活を目ざして飛んで行く時、自分の最後の挨拶を伝えるように『命令し』、かつ自分の愛…