『カラマーゾフの兄弟』第9篇

『カラマーゾフの兄弟』第8篇―第11篇(校正ずみ)   (『ドストエーフスキイ全集』第13巻(1959年、米川正夫による翻訳、河出書房新社)))

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『カラマーゾフの兄弟』第九篇第九章 ミーチャの護送

[#3字下げ]第九 ミーチャの護送[#「第九 ミーチャの護送」は中見出し] 予審調書が署名されると、ニコライは巌かに被告のほうを向いて、次の意味の『判決文』を読んで聞かせた。何年何月何日某地方裁判所判事は某を(すなわちミーチャを)しかじかの事…

『カラマーゾフの兄弟』第九篇第八章 証人の陳述『餓鬼』

[#3字下げ]第八 証人の陳述『餓鬼』[#「第八 証人の陳述『餓鬼』」は中見出し] 証人の審問が始まった。けれど、筆者はもう今までのように、詳しく話しつづけることをやめよう。それゆえ、呼び出された証人が一人一人、ニコライの口から、お前たちはま…

『カラマーゾフの兄弟』第九篇第七章 ミーチャの大秘密――一笑に付さる

[#3字下げ]第七 ミーチャの大秘密――一笑に付さる[#「第七 ミーチャの大秘密――一笑に付さる」は中見出し]「みなさん。」彼はやはり以前と同じ興奮のていで言い始めた。「あの金は……私はすっかり白状しましょう……あの金は私のものでした。」 検事と予審…

『カラマーゾフの兄弟』第九篇第六章 袋の鼠

[#3字下げ]第六 袋の鼠[#「第六 袋の鼠」は中見出し] ミーチャにとってはまったく予想外な、驚くべきことがはじまった。以前、いな、つい一分間まえまでも、彼は誰にもせよ自分に対して、ミーチャ・カラマーゾフに対して、こんな振舞いをなし得ようと…

『カラマーゾフの兄弟』第九篇第五章 受難―三

[#3字下げ]第五 受難―三[#「第五 受難―三」は中見出し] ミーチャは気むずかしげに話し始めたが、しかし、自分の伝えようとしている事件を、ただの一カ所でも忘れたり言い落したりすまいと、前より一そう骨折っているらしかった。彼は塀を乗り越えて父…

『カラマーゾフの兄弟』第九篇第四章 受難―二

[#3字下げ]第四 受難―二[#「第四 受難―二」は中見出し]「ドミートリイ・フョードロヴィッチ、あなたご自分ではおわかりになりますまいが、あなたがそうして、気さくに返事して下さるので、私たちも本当に元気が出て来るというものですよ……」とニコラ…

『カラマーゾフの兄弟』第九篇第三章 受難―一

[#3字下げ]第三 霊魂の彷徨 受難―一[#「第三 霊魂の彷徨 受難―一」は中見出し] で、ミーチャは腰かけたまま、野獣のような目つきで、一座の人たちを眺めていた。彼は、人が何を言っているのやら少しもわからなかった。と、ふいに立ちあがって、両手を…

『カラマーゾフの兄弟』第九篇第二章 警報

[#3字下げ]第二 警報[#「第二 警報」は中見出し] この町の警察署長ミハイル・マカーロヴィッチ・マカーロフは、文官七等に転じた休職中佐で、やもめ暮しの好人物であった。彼は僅々三年前にこの町へ赴任して来たのであるが、もう今では世間一般の人か…

『カラマーゾフの兄弟』第九篇第一章 官吏ペルホーチンの出世の緒

[#1字下げ]第九篇 予審[#「第九篇 予審」は大見出し] [#3字下げ]第一 官吏ペルホーチンの出世の緒[#「第一 官吏ペルホーチンの出世の緒」は中見出し] ピョートル・イリッチ・ペルホーチンが、モローソヴァの家の固く鎖された門を力ーぱいたた…