ドストエフスキー全作品を電子化する

フョードル・ドストエフスキー(1821-1881)の全作品の電子化をめざしている人のブログです

『カラマーゾフの兄弟』第9篇

『カラマーゾフの兄弟』第九篇第九章 ミーチャの護送

第九 ミーチャの護送 予審調書が署名されると、ニコライは巌かに被告のほうを向いて、次の意味の『判決文』を読んで聞かせた。何年何月何日某地方裁判所判事は某を(すなわちミーチャを)しかじかの事件に関する被告として(罪状は残らず詳細に書き上げてあ…

『カラマーゾフの兄弟』第九篇第八章 証人の陳述『餓鬼』

第八 証人の陳述『餓鬼』 証人の審問が始まった。けれど、筆者はもう今までのように、詳しく話しつづけることをやめよう。それゆえ、呼び出された証人が一人一人、ニコライの口から、お前たちはまっすぐに正直に申し立てなければならぬ、あとで宣誓をしたう…

『カラマーゾフの兄弟』第九篇第七章 ミーチャの大秘密――一笑に付さる

第七 ミーチャの大秘密――一笑に付さる「みなさん。」彼はやはり以前と同じ興奮のていで言い始めた。「あの金は……私はすっかり白状しましょう……あの金は私のものでした。」 検事と予審判事の顔は長く延びた。彼らもこういうことはまったく予期しなかったので…

『カラマーゾフの兄弟』第九篇第六章 袋の鼠

第六 袋の鼠 ミーチャにとってはまったく予想外な、驚くべきことがはじまった。以前、いな、つい一分間まえまでも、彼は誰にもせよ自分に対して、ミーチャ・カラマーゾフに対して、こんな振舞いをなし得ようとは、夢にも想像できないことであった! それは何…

『カラマーゾフの兄弟』第九篇第五章 受難―三

第五 受難―三 ミーチャは気むずかしげに話し始めたが、しかし、自分の伝えようとしている事件を、ただの一カ所でも忘れたり言い落したりすまいと、前より一そう骨折っているらしかった。彼は塀を乗り越えて父の家の庭園へ入り込んだことや、窓のそばまで近よ…

『カラマーゾフの兄弟』第九篇第四章 受難―二

第四 受難―二「ドミートリイ・フョードロヴィッチ、あなたご自分ではおわかりになりますまいが、あなたがそうして、気さくに返事して下さるので、私たちも本当に元気が出て来るというものですよ……」とニコライは活気づいて言い始めた。たったいま眼鏡をはず…

『カラマーゾフの兄弟』第九篇第三章 受難―一

第三 霊魂の彷徨 受難―一 で、ミーチャは腰かけたまま、野獣のような目つきで、一座の人たちを眺めていた。彼は、人が何を言っているのやら少しもわからなかった。と、ふいに立ちあがって、両手をさし上げながら、大声に叫んだ。 「罪はありません! この血…

『カラマーゾフの兄弟』第九篇第二章 警報

第二 警報 この町の警察署長ミハイル・マカーロヴィッチ・マカーロフは、文官七等に転じた休職中佐で、やもめ暮しの好人物であった。彼は僅々三年前にこの町へ赴任して来たのであるが、もう今では世間一般の人から、好意をもって迎えられるようになった。そ…

『カラマーゾフの兄弟』第九篇第一章 官吏ペルホーチンの出世の緒

第九篇 予審 第一 官吏ペルホーチンの出世の緒 ピョートル・イリッチ・ペルホーチンが、モローソヴァの家の固く鎖された門を力ーぱいたたいているところで、われわれは一たん話の糸を切っておいたが、彼はもちろん、最後に自分の目的を達した。猛烈に門の戸…