2023-06-02から1日間の記事一覧

『ドストエーフスキイ全集 第12巻 カラマーゾフの兄弟』(1959年、米川正夫訳、河出書房新社)P078-P093

想念を押しこたえることができなかった。それほど自分で自分の思いに心をひしがれたのである。彼は径の両側につらなる、幾百年かへた松の並木をじっと見つめた。その径は大して長いものでなく、僅か五百歩ばかりにすぎなかった。この時刻に誰とも出くわすは…