『カラマーゾフの兄弟』第2篇

『ドストエーフスキイ全集 第12巻 カラマーゾフの兄弟』(1959年、米川正夫訳、河出書房新社)P078-P093

想念を押しこたえることができなかった。それほど自分で自分の思いに心をひしがれたのである。彼は径の両側につらなる、幾百年かへた松の並木をじっと見つめた。その径は大して長いものでなく、僅か五百歩ばかりにすぎなかった。この時刻に誰とも出くわすは…

『ドストエーフスキイ全集 第12巻 カラマーゾフの兄弟』(1959年、米川正夫訳、河出書房新社)P062-P077

リスト教発生後二三世紀の間、キリスト教は単に教会として地上に出現していました。そして、実際、教会にすぎなかったのです。ところが、ローマという異教国がキリスト教国となる望みを起した時、必然の結果として次のような事実が生じました。ほかでもない…

『ドストエーフスキイ全集 第12巻 カラマーゾフの兄弟』(1959年、米川正夫訳、河出書房新社)P042-P061

「神聖なる長老さま、どうかおっしゃって下さいまし、わたくしがあんまり元気すぎるために、腹を立てはなさいませんか?」肘椅子の腕木に両手をかけて、返答次第でこの中から飛び出すぞというような身構えをしながら、フョードルはふいにこう叫んだ。 「お願…

『ドストエーフスキイ全集 第12巻 カラマーゾフの兄弟』(1959年、米川正夫訳、河出書房新社)P026-P041

の僧院で長老に逢ったのである。 それは前に述べたように長老《スクーレッツ》ゾシマである。ここでわが国の僧院における長老とは何ぞや、ということについて一言説明を要するけれど、残念ながら筆者《わたし》はこの方面において、あまり確かな資格がないよ…