『カラマーゾフの兄弟』第7篇
ごとくこの理想一つを目ざして突進しないわけにゆかなかった。それゆえ、ときどきその他の一切を忘れてしまうことさえあった(後に自分で気がついたことであるが、彼は前日あれほどまで心配した兄ドミートリイのことを、この苦しい一日の間すっかり忘れてい…
か、人間の同胞的団結とかいう思想が、だんだん世の中に湮滅していって、今ではほとんど冷笑をもって迎えられるようにさえなった。実際、みずから案出した無数の欲望を満足させることにのみ馴れた囚われたる人間が、どうして自分の習慣から離れることができ…