『カラマーゾフの兄弟』第6篇

『ドストエーフスキイ全集 第12巻 カラマーゾフの兄弟』(1959年、米川正夫訳、河出書房新社)P334-P357

か、人間の同胞的団結とかいう思想が、だんだん世の中に湮滅していって、今ではほとんど冷笑をもって迎えられるようにさえなった。実際、みずから案出した無数の欲望を満足させることにのみ馴れた囚われたる人間が、どうして自分の習慣から離れることができ…

『ドストエーフスキイ全集 第12巻 カラマーゾフの兄弟』(1959年、米川正夫訳、河出書房新社)P310-P333

講義するわけにゆかぬ。よしルーテル派やその他の異教徒が、羊の群を奪い始めようとも、勝手に奪わせるほかはない。自分らの収入が少いのだから、などと断言して憚らないものさえある。ああ、神よ、彼らのためにかほどまで貴き収入を、いま少し多分に与えた…

『ドストエーフスキイ全集 第12巻 カラマーゾフの兄弟』(1959年、米川正夫訳、河出書房新社)P282-P309

き始めた。こうした憎悪の念が、かくまで険悪な経過をとってきたのは、最初イヴァンの帰省当時、ぜんぜん反対な事実が生じたためかもしれぬ。当時、イヴァンは急にスメルジャコフに対して、一種特別な同情を示すようになったばかりでなく、彼を非常に風変り…