『カラマーゾフの兄弟』第5篇
き始めた。こうした憎悪の念が、かくまで険悪な経過をとってきたのは、最初イヴァンの帰省当時、ぜんぜん反対な事実が生じたためかもしれぬ。当時、イヴァンは急にスメルジャコフに対して、一種特別な同情を示すようになったばかりでなく、彼を非常に風変り…
いては、もう一ことも言わないことにする。僕はわざと論題をせばめたのだ。僕は南京虫みたいなやつだから、何のために一切がこんなふうになってるのか、少しも理解することができないのを、深い屈辱の念をもって、つくづくと痛感している。つまり、人間自身…
「そりゃ、アレクセイさん、そのとおりですよ、その一年半の間に、あなたとリーズは幾千度となく喧嘩したり、別れたりなさることでしょうよ。けれど、わたしは喩えようもないほど不仕合せでございます。それはみんなばかばかしいことには相違ありませんが、…
わたくしのことを道化よばわりをしたのも、実際もっとも千万なのでございます。さあ、カラマーゾフさん、お伴いたしましょう、そして用件を片づけることといたしましょう……」 彼はアリョーシャの手を取って、部屋の中からすぐ往来へ引っ張り出した。[#3字…